風の鳴る国境
著者 : 角田房子
出版社 : 中央公論社(1965/06)
1960年代なかば、二人の若い日本人女性がフランスに留学する。 一人は世界で通用するピアニストを目指す、お金持ちの家に育った女性−早苗、もう一人は仏文専攻の女性−明子。 自由奔放でわがままな早苗とは対照的に、何事にもまじめに接し、他人の気持ちをいたわる明子。 フランスに来てから1年あまりの間の二人の変化を描いた小説。
明子が出会ったポーランドの外交官−ヨージェフや、明子の下宿先の女主人であるルチーナたちの口から語られるポーランドの歴史、戦争、国家間における弱肉強食の世界、そしてその国家に翻弄される一人一人の国民…。 日本の敗戦当時4歳だった明子の目を通し、敗戦から高度成長期を突き進む日本と日本人に対して、考えるべき様々な問題を指摘している。
この本は小説として書かれているが、ポーランドやポーランドを取り巻くヨーロッパの歴史などの語り口は、著者が日本や日本人に対してどのような思いでいたのか、また国と国民との関係など、その後の著書に繋がるものを多く含んでいるように思える。
ところで、この小説に登場する二人の日本人女性であるが、二人ともあまりにも型にはまった女性に描かれているところが時代を感じるというか、ちょっと物足りなさを感じたが。(「型にはまった」といういうのは、要するに、「お金持ちの家にそだった令嬢はわがままで、傲慢で、…」とか「良妻賢母型」とかという意味で)